と驚いている暇もなく、ボーカルらしき男の子の短い挨拶の後、いきなり激しい音楽が始まった。高速のギターやドラムの音が、会場全体にガンガン響き渡る。

まったく知らない曲。ジャンル的にはこの前聴いたような激しいロックだった。わたしはその音に聴き入っていた。

ーーすごい。

動画で見たライブとはもちろんセットも規模も、全然別物だけど、真近で聴く音は、心臓を直接打つようにすごい迫力で迫ってくる。

ギターを弾くきみは、普段の呑気な笑顔のきみとは別人みたいだった。ちょっと練習しただけとはとても思えない指の動き。きみの指が奏でる音は、激しくて、だけどそれだけじゃなくて、強引に引き込まれる力がある。まるできみそのものみたいな音。


ーーすごいよ、広瀬くん。

まるであのオレンジ頭のギタリストみたい。

なんて思ったことは、恥ずかしくて絶対に本人には言えないけれど。

それくらい、素直にすごいしカッコいいと思った。