黒い垂れ幕のかかった体育館は、異様な雰囲気に包まれていた。
「な、なんか、すごいね……」
「うん……」
ライブと言ってももっと規模の小さいものかと思っていたのに、予想以上に本格的だった。
ここはほんとうに学校の体育館なのだろうかと疑いたくなるような本格的なセット。おまけに年齢不詳ないかつい集団がウロウロしていて、こういう場所に慣れないわたしたちは体育館の隅で小さくなっていた。
「わたしたち、完全に場違いだよね……」
「うん、そうだね……」
「よし、出よう」
「待って待って、せっかく来たんだから、せめて広瀬くんの番まで見ようよ!」
来海に引き止められて、わたしはなんとか逃げ出したい衝動をくっとこらえた。
「あ、始まるみたいだよ」
マイクを持ったパンクな人がステージに現れて開始の合図をすると、会場はさらに盛り上がる。
広瀬くんのグループは、なんと、トップバッターだった。こんなにすごい人前にもかかわらず、昨日と変わらない余裕の笑みで手なんて振っている広瀬くんの心臓は、鉄でできているに違いない。