いきなりドアが開いて、わたしはビクッとした。
「あ、お母さん……」
お母さんが不機嫌そうに腕を組んで、しかめ面で立っている。
「うるさいから来てみれば、なんなの、その下品な音楽は?」
「ご、ごめんなさい」
しまった。音量は抑えていたはずだけれど、それでも充分うるさかったらしい。
「いったいなんの影響?まさかあなた、変な人と付き合いがあるわけじゃないわよね」
ギクリとした。こういうときだけ、妙に鋭いのだ。
「そんなことないよ」
「それならいいけど。そんなくだらないもの聴くくらいなら、1分でも多く勉強しなさい」
「……はい」
ーーくだらないもの、か。
お母さんにとって、理解できないものは全部“くだらないもの”なんだろう。
理解できない人は、みんな“変な人”。
じぶんと違うから、理解できないから。
軽蔑して、遠ざけて。理解しようともしないで。
頭がいいか悪いかでしか人の価値を判断しない、うちの学校の人たちとおなじ。少し前のなにも知ろうとしなかったわたしとおなじだ。
ーーみんながみんな、お母さんが思っているような人じゃないんだよ。
なんて、言ったところで伝わるはずがないから。
結局、なにも言えなかった。