「有志のイベントなんだけど、毎年けっこう盛り上がるんだ」

「へえ……」

なんだかよくわからないけれど、うちの学校のそれとはまったく別物らしいイベントだということはわかった。

「友達に誘われてさ。音楽好きだし、楽しそうだしやってみようかなって」

そんな軽いノリなんだ……。
ていうか、やっぱり友達いるんじゃん。

でも、

「無理。行かない」

わたしはきっぱり言った。

「一緒に行く人いないし、ひとりで行くなんて、絶対に無理」

隣とはいえ、うちの学校とはなにもかも違う場所。広瀬くんみたいな平和な人ばかりじゃないことくらい知っている。そんなところにわたしみたいな地味な女子が1人でふらふらしてたら浮くに決まっている。前みたいに絡まれたり、それどころか無傷で帰ってこれないかも……。

ふと、一瞬、来海たちの顔が浮かんだけれど、すぐにそれも無理だと打ち消した。

“あんな場所に行くなんてあり得ない”そう言われるのがオチだ。

「そっか、ならしょうがないな」

広瀬くんは、とくに残念がる様子もなく、あっさり引き下がった。

ーーほら、やっぱり。

きっと、誰にでもそう言っているんだ。わたしが気にすることなんてない。