わたしは、勘違いをしていたのかもしれない。
広瀬くんは、よく笑う人。なにがそんなにおかしいのかなって不思議になるくらい、なんでもないことでも楽しそうに笑うから。悩みなんてないんだと、勝手に思っていた。
でも、見た目が笑っているからって、心のなかまで笑ってるわけじゃない。
そんなの、わたしはずっと前から、よく知っていたのに。
きみも、おなじだったんだ。
誰かに言いたいけれど、でも簡単には口にできなくて。複雑で、厄介な気持ち。
ーーねえ、広瀬くん。
きみの悩みって、なに?
きみは、なにに苦しんでいるの?
訊きたくて、でも訊けなくて。
オレンジ色の空の下、明るく染まるきみの横顔を、わたしはただ見ていた。