「愛音はたぶん、じぶんで思ってるよりずっと、いろんなことを我慢してるんだと思う。愛音がなにに苦しんでるのか、おれにはわからない」

でもね、ときみはわたしの目を見て言う。

「覚えていて。愛音はひとりじゃない。辛いときは、おれを呼んで。辛いことは、半分ずつ。ひとりで抱えるより、楽な気がするだろ?」


「……っ」

まっすぐに見つめるその瞳から、わたしは目を離せなかった。

どうしてーー

「どうして、そんなことがわかるの?わたし、なにも言ってないのに」

きみは、わたしのことをなにも知らないはずなのに。

会ったばかりなのに、なんで、我慢してるだなんてーー


「おれも、経験あるから」

「え……?」

思わず、ドキリとした。

そうつぶやいたきみの横顔が、一瞬、苦しそうに歪んで見えたから。