そのとき、おかしなことが、わたしの体に起こった。
ーーキィィィン
妙な音が、耳に響いた。耳を伝って頭全体に響きわたるような、奇妙な音。
なに、この音?
周りの人は誰も反応しない。当然だ。音は、わたしの内側から聴こえるのだから。
同時に、外側から現実の音も聴こえる。
『まもなく電車が到着します』
アナウンスが鳴って、電車が目の前に停まって、人が吸い込まれていく。
わたしも乗らなきゃ。足を動かさなきゃ。そう思うのに、両足は地面に張りついてしまったみたいに、ピクリとも動かない。
目の前で電車のドアが閉まるのを、わたしは呆然と見ていた。
人がいなくなったホームで、
ーーキィィィン
また、聴こえた。
なんなの、この音。
繰り返す、頭のなかを引っ掻くような不快な音。周囲の音が消えて、もうその音しか聴こえない。
「やめて……」
わたしはうずくまって、両手で耳を押さえた。でも、いっこうに鳴り止まない。まるで耳のどこかの機能が壊れてしまったみたいだ。
なに?なにが起こってるの。
怖い……だれかーー