◯
昼休憩、お弁当を食べた後。
「ねえねえ、この服かわいくない?」
「うん、かわいい。このモデルの子もかわいいよね」
「ノアでしょ?最近よく見るよねー」
3人が雑誌を見ながらはしゃいでいる。みんな、部活や生徒会やじぶんの役割をちゃんとこなして、家に帰れば勉強もやっていて、それでいておしゃれにも気を遣っているから、すごいなといつも思う。
盛り上がっている3人のそばで、でも、わたしはいつもみたいに笑えなかった。
『全然……、知らない人、だから』
昨日、じぶんが言ったことを思い出すたびに、心にザラザラと砂が入り込むような嫌な感じを覚える。
どうしてーーそんなの、言った直後から、わかっていたはずだ。認めたくなんてなかったけれど、わたしは、後悔しているんだ。
一度会えば友達なんて気楽に思えるほど、わたしは社交的なタイプじゃない。そしてわたしとは正反対の、まるでずっと昔からの友達かのように接してくる広瀬くんが、苦手だった。
きみとわたしはあまりにも違いすぎた。だから話していると戸惑ったり余計なことを考えてしまう。
でも、あんなに純粋に、綺麗に笑える人を、わたしは初めて見たんだ。
不思議だった。会ったばかりのわたしに、どうしてそんな風に笑えるんだろう。警戒心がないのかな。それとも、そういうふりをしているだけなのかな。
そんな猜疑心すら、きみと話していると、いつの間にか溶けていった。