「大丈夫？顔色悪いよ？」

来海が心配そうに覗き込んで、わたしは頷く。

「大丈夫だよ。なんか、ごめんね」

「なんで倉橋さんが謝るの？変なのー」

来海がおかしそうにからからと笑うから、わたしはホッとした。だけど同時に、胸が痛かった。

ーーもう、きみがわたしに話しかけることはないんだろうな。

頭の隅で、ぼんやりとそんなことを思った。

当たり前だ。わたしがじぶんで、知らない人って言ったんだから。その瞬間、わたしたちはまったくの他人になったんだ。

というか、もともと友達ですらない他人だ。知っていることと知らないことを比べたら、知らないことのほうが圧倒的に多い。

だから、これでよかったんだ。

言い訳みたいに、そう思った。言い訳でもなんでもいいから、じぶんがついた情けない嘘を正当化したかった。

それなのにーー、

じぶんで突き放して逃げたくせに、

こんなにも振り返りたくなってしまうのは、どうしてなんだろう。