こんなに近くにあるのに、あまりにも違いすぎる。レベルも、校風も、そこに通う生徒たちも。違いすぎて理解できないからバカにする。
それはさすがに言い過ぎじゃ……と思うこともたまにあるけれど、仕方ないと思う。理解できないことに対して、人は恐怖を抱いたり、軽蔑したりするものだから。
離れた場所で人を見下すのは、楽だから。
それにあっちだって、わたしたちのことをガリ勉とかキモいとか言ってバカにしているんだし、お互い様だ。
「倉橋さんもそう思うよね?」
急にこっちに振られて、どきりとする。
「……うん、そうだね」
わたしはぎこちなく頷く。
わたしもそう。知らなかったし、知ろうともしなかった。
絶対、関わることなんてないと思っていた。
だけど、ほんの少しでも関わってしまった瞬間、なにかが変わってしまった。
『勉強って、そんなに大事?』
あの言葉が、ずっと、頭にまとわりついて離れなかった。
きっと深い意味なんてなかったのだろう。ただ純粋に疑問を投げかけただけ。だけど、その純粋さにドキリとした。
大事に決まってるでしょーーそう、はっきり答えることができなかった。答えなんて考えるまでもないくらい、わかりきっているはずだったのに。
ほんの一瞬、考えてしまったんだ。
ーーほんとうに大事なの?それは、誰のため?
だけどそんなことは、考えても仕方ないことだって、わかっている。
だって、それを否定してしまったら、いままで頑張ってきた意味がなかなってしまう。
そんなのは、ただの逃げだ。
変化なんていらない。
いままで通り、余計なことはなにも考えず、ただ決められたことをやっていればそれでいい。
考えたところで、わたしが進む道を変えることなんて、できないんだから。