会ってどうするか、なにを言うかじゃなくて、もっと単純な気持ちーー
“会いたかった”
それがいまのわたしの、いちばんの気持ち。
会いたい、会いたい、会いたいーー
そう強く願って、やっと、会えた。
きみ以外、ほかの誰にも言えないこの気持ちが、胸の奥から溢れて止まらなかった。
「愛音」
広瀬くんは伸ばした両腕で、わたしを抱き締めた。
「……っ」
驚いて息が止まった。だけどその腕が小さく震えていることに気づいた。
「広瀬くん……」
わたしも、そっときみの背中に手を回した。
心臓の音が聴こえる。じぶんのじゃない、きみの音。いままでで、いちばん近くにきみがいる。
ほかのことなんて、もうどうでもよかった。
それだけで、胸がいっぱいになった。
「おれも、めちゃくちゃ会いたかった」
と広瀬くんは言って、でも、と少し間を置いてから続けた。
「……でも、おなじくらい、会うのが怖かった」
それは、きみの口から初めて聴いた弱音。
わたしは目を見開いて、でもなにも言わずに、次の言葉を待った。