「でさーこの前ー」
「え、それほんとに?」
「あはは、それおもしろい」
最近、クラスメイトの3人グループと一緒にお弁当を食べるようになった。
来海、佐奈、由香里は、クラスのなかでも明るくて目立つタイプだ。いままでひとりだったわたしが、どうして彼女たちといるようになったのかというと。
夏休みが明けて数日が経ったある日、
『倉橋さん、よかったら、うちらと一緒に食べない?』
それまでほとんど話したこともなかったクラス一の美少女、牧瀬来海(くるみ)に、そう声をかけられた。
なんでわたし?と疑問に思った。
艶やかな長い黒髪、日焼けひとつ知らない白い肌、パチリとした大きな目。可愛くて明るくて、男女問わず人気がある彼女がわたしを誘うなんて、なにか裏があるに違いない。学年1位のわたしと仲良くしておけば便利だとか、きっとそんな理由だろうけど。
『嫌かな……?』
潤んだ瞳で見つめられて、わたしはう、と返事に詰まる。
正直に言えば、1人のほうが誰にも気を遣わないし楽だった。はっきり、そう言えばよかったのに。
『べつに……嫌ではない、けど』
ーーなのに、どうしてか、そんな曖昧な答え方をしてしまった。
『ほんと?じゃあ、決まりね!』
できればそのまま迷っていてほしかった、という本音をぐっと呑み込む。
『でも、わたしが入っていいの?』
『もちろんだよ。人数多いほうが楽しいし』
わたしが入ったところで、楽しくなるとは思えないんだけど……。
ともかく、わたしは美少女の押し(もしくは目力)に負けて、思わず頷いてしまったのだ。
後で猛烈に後悔することになるとも知らずに……。