◯
「ーーさん、倉橋さんっ!」
呼ぶ声にハッと目を覚ますと、
「倉橋さん、大丈夫?」
と来海が心配そうに覗き込んでくる。
「あ……おはよう」
寝起きの頭でぼうっと応えると、来海がますます心配そうな顔をする。
「もう授業終わっちゃったよ」
「うそっ!?」
慌ててガバッと顔をあげる。壁の時計を見ると、来海の言う通り、授業もHRもとっくに終わっている時間だった。1時間以上、鐘の音も耳に入らないほど爆睡していたことになる。
「倉橋さんが授業中に寝るなんて異常事態だって、みんなざわざわしてたよー」
「ごめんね。ちょっと、寝不足で」
昨日はほとんど眠れなかった。考えることがありすぎて、頭のなかがぐちゃぐちゃで、だけどどれだけ考えても、なんの結論も出なかった。
「なにかあったの……?」
心配そうに見つめる来海に、わたしは、迷いながら頷いた。
こんなこと、人に相談していいのかわからない。だけど、じぶんだけでは、抱えられる気がしなかった。
「ーーどうしたらいいか、わからなくて」
こぼれるように口にした、ちいさなつぶやき。
誰かに、どこに向かえばいいかわからないいまの気持ちを、聞いてほしかった。
「話、聞かせてくれる?」
来海の言葉に、わたしはこくんと頷いた。