「ーーさん、倉橋さんっ!」

呼ぶ声にハッと目を覚ますと、

「倉橋さん、大丈夫?」

と来海が心配そうに覗き込んでくる。

「あ……おはよう」

寝起きの頭でぼうっと応えると、来海がますます心配そうな顔をする。

「もう授業終わっちゃったよ」

「うそっ!?」

慌ててガバッと顔をあげる。壁の時計を見ると、来海の言う通り、授業もHRもとっくに終わっている時間だった。1時間以上、鐘の音も耳に入らないほど爆睡していたことになる。

「倉橋さんが授業中に寝るなんて異常事態だって、みんなざわざわしてたよー」

「ごめんね。ちょっと、寝不足で」

昨日はほとんど眠れなかった。考えることがありすぎて、頭のなかがぐちゃぐちゃで、だけどどれだけ考えても、なんの結論も出なかった。

「なにかあったの……?」

心配そうに見つめる来海に、わたしは、迷いながら頷いた。

こんなこと、人に相談していいのかわからない。だけど、じぶんだけでは、抱えられる気がしなかった。


「ーーどうしたらいいか、わからなくて」


こぼれるように口にした、ちいさなつぶやき。
誰かに、どこに向かえばいいかわからないいまの気持ちを、聞いてほしかった。

「話、聞かせてくれる?」

来海の言葉に、わたしはこくんと頷いた。