呆然としながら家に帰った。

広瀬くんのお母さんがわたしに話した言葉が、頭のなかをずっと回っている。ぐるぐると、濁った水のなかで引っ掻き回されるみたいに。

わたしはなんとか家に向かって歩いていたけれど、頭も足もぐらついて、ほんとうに前に進んでいるのかどうかさえ、よくわからなかった。

辺りはもう夕焼け空なんてどこにも見えない真っ暗な夜で、星すら見えない空にはだだっ広い雲がかかっていた。


そんな。まさかーー


だって、きみはいつも笑って、楽しそうで。友達がたくさんいて、そこにいるだけで周りの人を元気にしてしまう人だから。

そんなきみが、そんなに大きなことを抱えていたなんて。少しも、気づかなかった。

なんで、言ってくれなかったんだろう。

こんなに、毎日一緒にいたのに。

いつそれを聞いても、わたしはやっぱりいまみたいに動揺するに決まっているし、どうしようもないけれど。

『普通にしててよ』

きみはそう言った。


でも、普通ってなに?

どうやって普通にすればいいの?

きみはどうして、あんなにも普通でいられたのーー?