病院に着いてすぐに、広瀬くんのお母さんが駆けつけた。憔悴しきった彼女は、わたしを見ると小さく頭を下げて、病室に入ってきた。わたしも頭を下げて、入れ替わりで病室を出た。

椅子に座って落ち着く気にもなれずに、ただ呆然とそこに立ち尽くしていた。

時間の感覚がまるでなくて、あれからどれくらい経ったのか、全然わからない。携帯を見ればわかることだけど、そんな気力すらなかった。

情けなさでいっぱいだった。

目の前で大切な人が倒れたのに、頭が真っ白になって、馬鹿みたいに取り乱して。

わたしは医者を目指しているはずなのに。そのためにずっと、一生懸命勉強してきたのに。

こんなときになにもできない。無力なじぶんが嫌になる。

いったいわたしは、いままでなんのために勉強してきたんだろう。こういうときのためじゃないのか。大事な人を守るためじゃないのか。

テストでいい点を取ったって、なんの意味もない。

なんの役にも立てない。