『勉強って、そんなに大事?』
あのとき、ドキリとした。
『無理してるように見えるから』
ついさっきばかりの人になにがわかるんだーー
苛立つのは、心を見透かされた気がしたから。
わたしは無理なんてしていないのに。それに、
大事か大事じゃないかなんて、そんなこと、考えたこともなかった。
親が病院を経営していて、一人娘のわたしが跡を継ぐことは、生まれたときから決まっていることだった。大事かどうか、わたしの意思なんてなんて関係なく、決まっているから勉強する。高校だって大学だって親が決めた学校で、就職先は1つしかない。
だから、考える必要なんて、なかった。ただ決められたことをやっていれば、それでよかった。
そのことに疑問を抱いたことなんてなかった。ほかにやりたいことがあるわけでもないし、それでいいと思っていた。
『でもすこし、気になったんだ』
と彼は言った。
なにが気になったんだろう。
ほんの少し気になったけれど、やっぱり、そんなのどうでもいいとも思った。きっと明日には忘れてしまう程度の、些細なことだ。
彼にとっても、わたしにとっても。
ただの暇つぶしなのだから。知らない相手と15分も話していたことだって、事故によるただの偶然の副産物だ。
なにも、特別なことなんてない。