病室の白いベッドで、広瀬くんは寝ている。チューブに繋がれて、点滴を打っているところだ。

「この子と、知り合いなのか」

この病院の院長ーー白衣を着たお父さんが、そう尋ねた。


「うん」


わたしは頷いた。それ以上の言葉を、口にする気にはなれなかった。

「そうか」

必要な分だけの、短い会話。

口数が多いほうじゃないお父さんとは、元から会話が少なかったけれど、ここ最近は、家でもほとんど話をしていなかった。

まさか、こんな場所で話すなんて思わなかった。

こんな場所で、話なんてしたくなかった。

詳しい話を教えてほしいけれど、聞いてどうするというのだろう。

頭のなかが、こんなにぐちゃぐちゃで、なにひとつまともに考えられないというのに。