わたしは必死に電話をかけた。もう何年も近づくことのなかった、お父さんがいる病院に。ここからいちばん近い病院が、そこだった。

すぐにやってきた救急車に、広瀬くんは運び込まれた。

救急隊員がやってきて、わたしになにがあったのかを尋ねた。わたしは情けないくらい動揺しながら、どうにか状況を伝えた。


お願いしますーー


『広瀬くんを、助けてください』


なにかの映像を、早送りで見ているみたいだった。そこにいるのに、べつの世界の出来事のような、そんな気がした。


ーーそうだったらいいのに。


だけど、目の前で起こっていることは、紛れもなく現実で。


「広瀬くん……」


泣きそうになりながら、でも泣いちゃダメだと必死に堪えながら、救急車のなかで、ずっときみの名前を呼んでいた。

だけど何度呼んでも、きみは、いつもみたいに呑気な声で応えてはくれなくて、固く目を閉じたままだった。