とんでもないことを言ってしまった。口答えどころか、教師をバカ呼ばわりしてしまった。
「く、倉橋くん、いま、バカと……」
ワナワナ震える先生に、
「言いましたよ。じぶんの都合しか考えてないバカな大人だって」
「きみ、じぶんがなにを言っているのかわかってるのか」
もう取り返しがつかないことだけはわかる。
こうなったらーー、
「広瀬くん、逃げよう」
そう。こうなったら、逃げるが勝ち。
「え、いいの?」
「よくない!きみ、待ちなさいッ!」
怒涛の叫び声を背にして、わたしたちは走った。
人混みは走りづらいけれど、おかげで先生の姿はすぐにそのなかに紛れてくれた。