「倉橋くんじゃないか。こんな時間にこんなところでなにをしているんだ」

先生は顔をしかめて言って、チラリと広瀬くんを見た。

「塾に行くというわけではないようだな」

「そうですけど」

とわたしは言った。

反抗的な態度が気に入らなかったのだろう。先生は、余計に顔の皺を険しくして言う。

「倉橋くん、きみは優秀な生徒だ。我が校に必要な貴重な生徒だ。こんなところで遊んでいるのを見過ごすわけにはーー」


「うるさい」


わたしは言った。

「必要とか貴重とか、ごちゃごちゃうるさい。あんたたちの事情なんか知るか。テストが終わったときくらい好きに遊ばせろバカ!」

「バ……」

先生はあんぐりと目と口を開いてわたしを見ている。