お店を出て、また街を歩いた。さっきより夕暮れの濃さが増した空の下。街中ではそんなに星はきれいに見えないけれど、その代わりにイルミネーションがキラキラと煌めいて、夢のなかにいるみたい。

いまなら、普段は言えないことも、言える気がした。

「あのね、さっき言ってた冬休みのことなんだけどーー」

と、そのときふいに、隣を歩く広瀬くんに、違和感を覚えた。


「広瀬くん……?」


呼んでも、返事はなかった。

「広瀬くん」

ーーまた。聴こえてないのかな。

こんなに近くにいるのに、声が届かない。人混みだからかもしれないけれど、それだけじゃないような気がする。

胸の奥がざわりと揺れた。

ねえーーなにか言って。

わたしの声は聴こえやすいって言ったでしょ。得意な声だって。

聴こえてるんだよね。

さっきみたいに。いつもみたいに。呑気な顔でこっちを向いて、きみの声を聴かせてよ。