その日以来、わたしは誘われなくなった。
遊びに行くときも、教室を移動するときも、行事の後の打ち上げも、わたしだけ誘われなかった。
わかりやすくいじめや無視をされていたわけじゃないけれど、なんとなく、わたしを誘っちゃいけない空気が出来上がっているのがわかった。
『愛音ちゃんは勉強が好きなんだもんね』
『うちらといてもつまんないよね』
ーーそんなことない。わたしだってみんなと遊びたい。
だけど、本音を口にすることはなかった。わたしの気持ちなんて、誰も興味ないだろうと思った。
その頃から、両親の仲が悪くなりはじめて、誰にも悩みを相談することもできず、わたしは居場所をなくしていった。どこにいても息苦しかった。
あのとき、一緒に行くって言っていればーー
些細なことだった。誘いを断ったりしなければ、なにか違っていたかもしれない。ひとりにならずに済んだかもしれない。
ケーキを食べに行くなんて、正直に言わなければよかったのに。そんなちょっとした嘘をつく発想さえ、わたしにはなかった。
たったこれだけのこと。いま思えばほんとうにくだらないこと。だけどわたしは何度も後悔して、いまでもそれを、ばかみたいに引きずっていたんだ。
「じゃ、今日は愛音の夢が叶った記念だ」
「なにそれ」
わたしは思わずぷっと吹き出した。
「でも、そうだね。やっと念願が叶ったよ」
「どうだった?」
「すっごい幸せ」
パフェに小さなケーキも乗っていたし、欲しかったものを一気に詰め込んだ気分だった。