「どうぞ、ゆっくりしていってください」
カウンターの奥でばっちり会話を聴いていたらしいマスターが、グラスとあつあつのおしぼりをテーブルに置きながら渋い声で言って、わたしは照れて笑った。
いちばん最初に目に飛び込んできたパフェとコーヒーを頼んで、数分後、運ばれてきたそのサイズにびっくりした。
「でかっ」
「こ、こんなに食べれるかなぁ」
一口食べてみて、その甘さにまた驚く。
「甘っ」
「冷たっ」
「でもおいしい」
「うん、おいしい」
抑えめの声で、ふたりで口々に言いあいながら、でも止まらなかった。
食べた瞬間口いっぱいに広がる罪悪感を覚えるほどの甘さ。だけど、すぐになくなってしまうから、またすぐにほしくなる。
初めて知る感覚。病みつきってこういうことだ。
口のなかが甘さで満たされたら、今度はコーヒーの苦さで中和する。普段は砂糖をたっぷり入れなければ飲めないコーヒーも、いまはブラックでちょうどよかった。
「ごちそうさまっ!」
ふたりでも絶対に無理だと思っていた大きなパフェを、あっという間に食べ終えてしまった。つい我を忘れるくらい、幸せなおいしさだった。
「おいしかったぁ」
「く、苦しい」
最初からペースを考えずにわたしよりもたくさん食べていた広瀬くんは、当然そうだろう。