手を繋いだまま、わたしたちは華やかに彩られた通りを歩いた。

はぐれると困るし、離すタイミングを失ってしまったのもあるけれど、それ以上に、きみの手を離したくなかった。

このままどこにもたどり着かずに、ずっと繋いでいれたらいい。そんなバカなことを、願ってしまうくらいに。

ーーきみは、どう思っているのかな。

気になるけれど、いまはそれよりも心臓の音がうるさくて、平常心を装うのに精一杯だった。

いくつものショッピングビルを通り過ぎて、ふいに昔ながらのレトロなビルの1階にある喫茶店に目を留めた。

どこを見てもクリスマスムードの街中で、そこだけ季節感なんていっさい気にしないで、ガラスの奥にはおそらく年中変わっていないと思われるパフェやソフトクリームのサンプルが飾られている。ちょっと寒々しいけれど、生クリームの上にフルーツやビスケットがてんこ盛りのそれは、すごく甘そうで、キラキラしていて、すごく、魅力的で。

「おいしそう……」

無意識に、そうつぶやいていた。

「よし。じゃ、ここに決まり」

「え、早っ」

「直感は大事だろ」

ニッと笑う広瀬くんには、敵わないなと思う。

ドアを開けるとカラコロと可愛らしい音が鳴って、コーヒー豆の匂いがふわりと香った。カウンターの奥に立つ渋いマスターが豆を挽きながら、一瞬だけわたしたちを見て、また豆挽きに戻った。

こういう店は初めてだった。通りを歩いていた若者はみんなこの店の前を通り過ぎて、お客さんは常連さんのような中年かお年寄りばかりだった。

なんとなく、高校生が来る場所ではないような。

「ね、ねえ、わたしたち、場違いじゃない……?」

とわたしはヒヤヒヤしながら小声でささやくけれど、

「べつにいいだろ。もう入っちゃったんだし」

案の定、広瀬くんに笑い飛ばされて終わった。