でもーー、

いまはきみが隣にいて、わたしの手をとって歩いてくれる。その瞬間、あのときみたいに、わたしのなかの不安が、ゆっくりと溶けていく。

「愛音、見て」

顔をあげて、目を見開いた。

「わ……」

まだ夜というには早い時間。だけど気の早い街は、早くもたくさんの煌びやかなイルミネーションに彩られていた。

駅から続く階段も、テラスも、道沿いの木も、建物も、街全体がとくべつなプレゼントみたいに、辺り一面クリスマス仕様になっている。

きれい。

満天の星空が落ちてきたみたいな光景に、思わずため息が出る。

「これ、どこに向かってるの?」

「さあ?」

やっぱり、ノープランだった。

「頑張った祝いだし、なんかおいしいものでも食べに行こうよ」

「頑張った祝いってなに?」

わたしは思わずくすりと笑った。

わたしなら平均点くらいで喜ぶなんて絶対ないけれど、広瀬くんにとってはいつもと違うってだけで、お祝いになるんだ。