今年最後のテストの順位が発表されて、教室は盛り上がっていた。
わたしはいつも通り全教科満点で、順位なんて発表される前からわかっているから、とくに盛り上がることもなくぼんやり窓を眺めていた。
「また倉橋さんが1位だったねー」
「さすがだよねー」
「倉橋さん、もうちょっと嬉しそうにしないと、石田くんが可愛そうだよ?」
「え?ああ……」
なんだか背後からすさまじい視線を感じると思ったら、石田くんだった。
「すんごい睨んでるね」
「入学してから一度も勝てたことないから」
「なんか闘争心燃えてるよねー」
「…………」
そんなものを燃やされたところで、どうしようもない。
わたしだって少しでも成績を落とせば後でなにを言われるかわかったものじゃないから必死なのだ。
放課後、なんとか石田くんの視線から逃れて学校を出て、わたしはふうと息を吐いた。
なんだか理不尽な疲れを感じながら駅に向かうと、
「愛音ー」
わたしの名前を呼ぶ声に、ドキリとした。
心臓の音が速くなる。
どうしよう。いやどうもしなくていいんだけど。
広瀬くんが手を振りながらこっちに来て、
「よ、愛音」
とニッコリ笑う。
「…………」
いつもの広瀬くんだった。
だけど、わたしのほうは全然いつも通りじゃなかった。
その顔を見た途端に動悸が速くなって、頭がぼうっとしてしまう。