一緒に勉強しはじめて、いつもより長くきみと一緒に過ごすようになって。
前より少しきみのことを知って、おなじくらいわからなくなった。
だけど、わからないから、もっと知りたいと思った。
わからないと言われても。
わからなくていいと言われても。
それでも止められないくらいに、強く。
誰かに対して、こんなことを思うのは初めてで、戸惑った。認めたくなくて、気づかないふりをしてみたりもした。
だけど、じぶんに嘘はつけないから、もう、認めるしかなかった。
「広瀬くん」
少し前を歩くきみの名前を、わたしは呼んだ。
だけど聴こえていないのか、きみは振り向かない。
ーー好きだよ、広瀬くん。
きみの背中に向かって、声にならない言葉をつぶやく。
わたしはいつの間にか、少しずつ降り積もる雪みたいに、
こんなにもきみのことを、好きになっていたんだ。
「広瀬くん」
わたしはもう一度呼びかけた。今度はさっきより少しだけ大きな声で。
「ん?」
広瀬くんが振り返って、わたしは微笑んで言った。
「明日、頑張ってね」
「うん、愛音も」
細かい雪が静かに降る夕暮れの帰り道を、わたしたちは歩いた。