数分後ーー。

「うーーーん。まったくわからん……」

基本問題でさっそく頭を抱えている広瀬くんに、わたしは愕然とする。

「これ、中学生レベルの問題なんだけど……」

「おれの頭脳は永遠に中二だから」

「威張るな」

「ごめんなさい」

机の上に広げた教科書を開いたまま、広瀬くんはため息を吐く。

「今度のテストで平均点以上とらないと冬休み毎日補習だって……」

「平均点なんて授業を聞いていれば楽勝でしょ」

「その授業を聞いてなかったからこうなってるんだよ」

「開き直ってる暇があるなら勉強しろ」

「ごめんなさい」

今日の広瀬くんは、見たことがないほどしおらしくて、なんだか不気味だ。

うっすらと暮れていく冬の公園。人はほとんど通らなくて、聴こえるのは風の音くらい。

「……」

節目がちの広瀬くんは、いつになく真剣な表情で、なんだかこっちまで緊張してしまう。