秋が足早に過ぎていって、11月が終わる頃。

放課後、何気なく携帯を見て、わたしは戸惑った。

「え……?」

新着メッセージが1件。広瀬くんからだった。


『愛音、勉強教えて(泣)』

びっくりしたのは、それにいままで広瀬くんから、勉強の話題なんてひと言も聞いたことがなかったから。

なんて返事をしようか考えていると、

「倉橋さん」

「は、はいっ!?」

急に声をかけられてビクッとする。

「石田くん、どうしたの?」

石田くんは落ち着きなくメガネを指で持ち上げて、

「おれの見間違いかもしれないんだが……きみ、三高の生徒と歩いていなかったか」

「石田くん、電車通学だったの?」

石田くんに電車で会ったことはなかったから、少し驚いた。

「いや、普段は違うんだが、野暮用があって」

とゴニョゴニョ言って、

「いや、そんなことはどうでもいいんだ」

「はぁ」

「それよりなんできみが三高の生徒なんかといるんだ」

「友達なの」

わたしは言った。

「友達……?あのおかしな頭の奴と?」

「頭オレンジ色だけど、普通の人だよ」

わたしはきっぱり言った。

少し前なら、わたしも見た目だけを見て、おかしな人だと思っていたかもしれない。

でも、いまは少しも思わなかった。前よりもたくさん、広瀬くんのことを知ったから。

見た目や学校が違っても、そんなに変わらないんだと知ったから。

「その、オレンジ頭のことなんだが……」

石田くんはなにが言いかけて、

「いや、いい」

と背を向けて行ってしまった。