4章 キセキの軌跡とその旅路 ――自らの所有者である女を、”我”は心底から美しいと感じた。 ――何かを美しいと思い何かをめでる気持ちが生まれるのは、”我”にもたしかに心がある証拠なのだと。 ――その美しいヒトはそう言った。システム失格ともいうような感情のゆらぎらしきものが、自分の中に観測されていることも自覚していたけれど。 ――それでも“我”は。ヒメムラサキは。ただの偽物。 ――自分自身が、痛いほど理解していた。