「それでは、儀式にうつります」
携帯ショップの店員が、にこやかに告げる。
儀式。
その言葉に、私は大きくため息をついた。
「あのう、やっぱりそれも起動しなくちゃダメですか?」
「ええ、そうですね……このモデルですと、T.S.U.K.U.M.O.がないと正常に動作しない可能性が高いです」
「電話だけできればいいんですけど」
「恐れ入りますが、こちらのモデルは非常に旧式でしてT.S.U.K.U.M.O.自体がオペレーティングシステムを兼ねています」
申し訳なさそうに眉を下げられる。
そうなるともう、こちらとしては反論の余地がない。
まったく。面倒なことになったものだ。
姉の部屋にあった遺書らしき封書のなかに詰め込まれていた、遺書らしき便箋……というか、遺書。
そこには、たったひとつの遺言が書き記されていた。
それは、
『T.S.U.K.U.M.O.システムを、妹のはるかに相続する』
という内容だった。
彼女が遺したたった一つの遺言が、T.S.U.K.U.M.O.システム入りの端末を妹に遺すといったものだった。私はその携帯電話に何の思い入れも感慨もなかったので面食らった。
なんだよ、その遺言。