それでも、なんとなく、幼いころの奇跡にそっくりのこの少女型インターフェイスを腕の中に閉じ込めていると、なんとなく安心してしまう。

『大変だったねぇ、拉致とか』

「それに、大学もばれちゃったしね」

 才谷杏子がこれ以上、こちらに何かしてくるとは思えなかったけれど、それでもやはり気味が悪い。

 なんていっても、チェーンをニッパーで切断し、平気で大学を特定してくる人間である。

『いざというときは、ヒメが守ってあげるから大丈夫』

 きゅう、と小さな体が抱きしめてくれた。

 胸の奥が、なんだか、むずむずする。

「ありがと。でも、奇跡のいろんな顔が知れて、ちょっと新鮮だった」

『意外な顔?』

「うん。ゴールデン街の酒場で、水曜日だけ店長をやってたとか」

『あー、やってたやってた!』

「それから、カラオケでは『踊るポンポコリン』歌ってたとか」

『それ、家でめっちゃ練習してたんだよ』

「……でも、音痴だった?」

『そうっ!』

 くふふ、と二人して肩をゆする。