『……はるちゃん、なんか寺みたいな匂いしない?』

「えっ!」

『お友達と遊んでくるなら、連絡頂戴ようっ』

 むむう、と頬を膨らませるヒメムラサキ。

「友達というか……とにかく、ほんとにごめん。今日は色々あってさ」

『色々?』

「うん、ご飯食べながら話すよ」

『むむー、ほんとに?』

「遅くなっちゃったけど、ヒメムラサキのご飯が楽しみでさ、昼から何も食べてないんだ」

『ほんとにっ?』

「うん、本当」

 新宿で食べたドーナツは、食後のデザートということにしておいてもいいだろう。

『やったぁ~! あのね、今日はヒメの自信作なんだから』

 輝く笑顔でヒメムラサキは言う。

 喜怒哀楽の表現が、とっても、とっても、わかりやすい。

 幼いころの奇跡と同じ容姿だからこそ、余計にそう思うのかもしれないけれど。

「ちなみにヒメムラサキの自信作って、なに?」

『松前漬け』

「渋すぎないっ?」

 シンプルにびっくりした。