帰宅するころには、もうすっかり夜中だった。

 電車と地下鉄での移動は、バイクでの移動よりも思いがけず時間がかかった。
おなじ神奈川県内でも、どの町も横浜にアクセスがいいと思ったら大間違いである。

 ドアを開けると、ヒメムラサキが飛び出してきた。

『おっそーい!』

「うわっぷ! ごめんって、ヒメムラサキ!」

『ヒメ、ずっと待ってたんだよっ』

 ドアを開けるなり飛びついてきたヒメムラサキをキャッチする。

 温かくて、重みだって感じるこの体が、呪術によって構築された紛い物というのはヒメムラサキと過ごす時間が長くなればなるほど信じられなくなってくる。

「遅くなってごめんね!」