「……何が言いたいの」
「ごめんなさい、迂遠なのはよくないですね。才谷さん、神崎奇跡のスマホには、あなたの連絡先は入っていませんでした」
「……っ、え?」
「それに、ヒメムラサキ……彼女が日常生活のパートナーにしていたT.S.U.K.U.M.O.も、あなたのことを知りませんでした」
「そんな、」
「つまり。――神崎奇跡は、たぶん、あなたのことを恋人だとは思っていなかったともいますよ」
「っ、そんなはずないっ!」
「すみません、そういう人なんです。あの神様みたいと皆さんがおっしゃる姉は。たぶん、彼女には人の心が分からないのかも」
「だって、だって、一緒にたくさん過ごして、それで、私のこと……」
「生前、姉を好いてくださって、気持ちを伝えてくださってありがとうございます。人の気持ちがわからない姉だったんですが、たぶん、嬉しかったのかもしれませんよ」
そんな、と茫然とする才谷に深々と頭を下げる。