「……はぁ」

 青天の霹靂、というのはこういうことを言うんだと思う。

 目の前ですごい形相で涙を滲ませている才谷を、かわいそうな人だと思った。

 たぶん、奇跡にとってそれはただの冗談の類だ。

 蝉の抜け殻が恋人なのだというような、掴みどころのない女だ。

 だから、たぶん何かの気まぐれで、ちょっとからかってやろうとか、そう思ったに違いないのだ。

「私は、奇跡さんの、恋人のはずだった」

「はぁ」

「四年もっ! 四年間も、そうして過ごしてきたんだよ。きっと、奇跡さんにとっては言葉に出さないその関係が心地よかったんだ。なのに、なのに私が全部をぶち壊しにした。奇跡さんが死んだのは、ここで私がそんなバカをやってからすぐのことだったんだよ」

 額を抑えてうずくまる才谷の声は震えていた。

 私は、やっと解放された腕をさする。小さなあかい半月型の跡が並んでいた。

「きっと、私が全部ぶち壊したんだ。あの神様みたいな奇跡さんが、私のことを見つけ出してくれたのに……、全部が全部、私のせいだなんて自惚れてはいないけど、奇跡さんを殺したのは、きっと私なんだよ」

 才谷は言う。

 私は、リュックを背負いなおして忘れものがないか確認をした。