入館料を支払って、展望台に上る。

 街と海を見下ろす夕日が真っ赤で、これはたぶん絶景の類なのだろうと思う。

 茜色の見事さに思わず、ほうっとため息をもらしてしまう。

「綺麗でしょ」

「そうですね、すごくきれいだと思います」

 ミニチュアみたいな街並みの向こうに沈んでいく夕日に、才谷のバレンシアオレンジの髪が照らされる。

「奇跡さんと、たった一度だけデートしたことがあるの」

「それが、この場所ですか」

「そういうこと」

「死んだ恋人の妹と一緒に思い出の場所巡り、っていうのは浮気にあたるんですかね」

「そんなわけないよ、だってその恋人はもう殺されちゃったんだから」

 腰に片手をあてて才谷は言う。

「ああ、才谷さん」

「杏子でいいのに」

「遠慮しておきます。その、そろそろ教えていただけませんか。その、『神崎奇跡は殺された』っていう話のこととか、あとは、その、私をいきなり叩いた理由とか」

「ああ、うん」

 才谷は勝ち誇ったようにほほ笑む。