美しく、賢く、完璧な女性。

 彼女に会った人は誰もが彼女を崇拝する。

 その名の通り、人の形をとった奇跡。

 それが、神崎奇跡だった。

 彼女が自分の姉であるという事実は、しばしば私を苦しめた。

 彼女は紛れもなく自分と同じ人間なのに、まるで周囲は彼女を神様か何かのように扱う。

 そうすると、自然と私はおなじ母から生まれたはずの神様のなり損ないになる。

 驚き、疑い、そして。ちっぽけな安心。

 それが、神崎奇跡の死に際して、私が抱いた感情のすべてだ。

 ――旅先で立ち寄った風光明媚な崖からの、転落死。

 それが、聞かされた奇跡の死因だった。

 一人旅だったそうだ。

 不慮の事故、という言葉はあまりにも現実感がなかった。