神崎奇跡の急死ですっかりと忘れてしまっていたけれど。

 同級生は就活、就活、就活だ。

 こちとら終活もせずに死んだ若き姉のことで、嫌に人間臭い仮想神格システムを相続したり、遺品整理に駆り出されたり.

 それから姉の恋人を名乗る美女にビンタをくらったり、ダイナミックレンジには欠けるけれども、なかなかに気の休まらない冒険的な日々を過ごしているのだ。

「そういうわけで、来週から一カ月は『伊藤先生』ですよ」

「へえ、美鈴ちゃんは教員採用試験受けるの?」

「んー、一応そのつもり。でも、民間も見てるけどね」

「ふうん」

 教採、民間、公務員。

 目の前に広がる可能性に浮足立っているような、大人になることに戸惑っているような、そんなブラックスーツの同級生たちの中で、私はすっかりと取り残されていることに気づいた。

 なんだか目の前にいる美鈴が、全然知らない人に見える。

 それは、髪の色が違うとか、そういうことじゃなくて、もっとずっと、大事な何かが変わってしまったような……それとも、そうじゃないような。

「あー……もしかして、はるか就活乗り遅れた?」

「お恥ずかしながら」

「えー、まじか」

 きつねうどんの油揚げをおだしに浸しながら、片手で器用に鞄のなかを探る美鈴が取り出したのは分厚い冊子だった。