奇跡の部屋からの帰り路。
ガトガトと揺れる電車。
車窓の景色は流れる。
冗談みたいに密集した建物を眺めていると、がらがらの電車で隣に座っているヒメムラサキが何かを持っていることに気づいた。
小さな、和紙でできた箱。
「何持ってるの?」
『え、奇跡の遺品だけど』
「勝手に持ち出したの?」
『形見分けなんでしょ』
「遺品整理だよ!」
『それって何か違うの?』
「それは……、でもとにかく、勝手に持ってくるのはやめてよ」
あの母親のこと、それを知ったら錯乱するかもしれない。
彼女は遺された神崎奇跡のものはすべて自分の手元に置こうとしているのだ。
『いいじゃん』
千鳥格子の和紙の箱を撫でながらヒメムラサキは言う。
「……それ、何が入ってるの?」
『見る?』
神崎奇跡があの部屋の中でわざわざ小箱に仕舞い込んでいたもの。
なにか、奇跡の、大切なもの。
そんなもの、見てやるもんかという気持ちと、ちょっと見てみたいという気持ちがもやもやと胸の中を満たす。
『奇跡、この箱はすごく大切にしてたんだよ』
「いや、じゃあいいや」
だったら、絶対見てやるもんか。
私は、神崎奇跡のことなんて、大嫌いなのだから。
ガトガトと揺れる電車。
車窓の景色は流れる。
冗談みたいに密集した建物を眺めていると、がらがらの電車で隣に座っているヒメムラサキが何かを持っていることに気づいた。
小さな、和紙でできた箱。
「何持ってるの?」
『え、奇跡の遺品だけど』
「勝手に持ち出したの?」
『形見分けなんでしょ』
「遺品整理だよ!」
『それって何か違うの?』
「それは……、でもとにかく、勝手に持ってくるのはやめてよ」
あの母親のこと、それを知ったら錯乱するかもしれない。
彼女は遺された神崎奇跡のものはすべて自分の手元に置こうとしているのだ。
『いいじゃん』
千鳥格子の和紙の箱を撫でながらヒメムラサキは言う。
「……それ、何が入ってるの?」
『見る?』
神崎奇跡があの部屋の中でわざわざ小箱に仕舞い込んでいたもの。
なにか、奇跡の、大切なもの。
そんなもの、見てやるもんかという気持ちと、ちょっと見てみたいという気持ちがもやもやと胸の中を満たす。
『奇跡、この箱はすごく大切にしてたんだよ』
「いや、じゃあいいや」
だったら、絶対見てやるもんか。
私は、神崎奇跡のことなんて、大嫌いなのだから。