神崎奇跡の訃報が届いたのは、ちょうど大学の昼休みだった。

 スマートフォンの電源を入れると同時に着信があり、うわずった声の母が彼女の死を告げた。

 まずは、素直に驚いた。

 姉は今年二十六才だ。

 それが、急死なんて。

 次にやってきたのは、疑念だった。

 持病があったとは聞いていない。彼女は美しく健康だった。

 そんな姉さんが急死ということは事故か、それとも自殺か。

 とにかく、「普通じゃない」ことが起きているのではないかという気分になった。

 後から冷静に考えれば、人間なんて普通に死ぬのに。

 知らせを受けてからたっぷり数分間、姉の死にまつわるミステリーとサスペンスを夢想してーー

 そして最後に、安堵した。

 もう、彼女はいない。




 神崎奇跡。

 彼女は私の姉であり、我が家の神様だったのだ。

 神様はときに、平凡なヒトを不幸にする。