『もう一度聞くけど、あなただぁれ? ヒメ、あなたのこと知らないよ』

 目の前の美女が、にわかに得体のしれない存在になっていく。

「……帰るわ」

 沈黙が続いた後、才谷はくるりと背を向けた。

 あ、と思う間もなく、神崎奇跡の部屋から出て行ってしまう。

「行っちゃった……」

 ヒメムラサキとふたり取り残された、神崎奇跡の部屋。

 なんだったのだろう、今の人は。
 恋人というのは嘘だったのだろうか。

 だとしたら……不法侵入者?