私の名前を聞いた才谷さんは、「ふぅん」と歌うように唸る。

「そう、はるかさん。遺品整理っていうのは、今日やらなくちゃいけない?」

 ニカッ、と才谷は笑った。

 そして、鋭利にとんがった赤い爪が動いて、私の手を取る。

 意外と温かい手。

「え?」

「だからさ。出かけようってこと」

「出かける? あなたと? どうしてですか!?」

「どうしてか。ああ。私がなんでさっきあなたのこと殴ったのかとか、知りたくない?」

「知りたくないですっ!」

「ふふ、ノリが悪いなあ」

 才谷さんは笑った。