奇跡のポケットから飛び出したのは。

 ……セミの抜け殻だった。

 その数日前に、私と山之上神社で遊んでいるときに見つけたものだった。

 ドン引きした。

 いやいや、セミの抜け殻が恋人って。

 それは相手の男の子も同様だったようで。

 ひどく動揺した彼はモゴモゴと何かを言いながら走り去っていった。

 あわれに地面に落ちた、男の子の差し出してきた花を拾って、奇跡は言った。

『綺麗な花ね。例えば蝉の墓前に七日間お供えするのにはピッタリだと思う』

 と。
 ……いわゆる電波発言であるけれど。

 それは奇跡の美貌とカリスマの前に神秘的な言動として告白を見守っていた同級生たちにより都市伝説のごとく語り継がれることになったのである。