ちらり、と時計を確認する。
午後四時。
このまま順調に契約が終われば、大学の課題レポートの提出には差しさわりなさそうだ。
早く帰って作業にいそしまなくてはいけない。期末レポートを落としたら単位がやばいので。
スタッフさんに書類の束を手渡しながら、視線をもう一度、ビロード風の布が張られたトレイに置かれた携帯電話に落とす。
今は電源が落とされているそれは、白くつるりとしているけれどもよく見ると細かい傷が浮かんでいる。
――そう。中古品である。
この携帯電話は、私が苦手な中古品で、これからどれだけ長く所持したとしても芯から「自分のもの」になることはない借りものだ。
「それでは、名義変更の手続きをさせていただきます。書類も、確かに承ります」
この中古の携帯電話の元の持ち主は、神崎奇跡という。
彼女は私の姉であり……、
「神崎様。この度は、ご愁傷様でございます」
……先月急死した故人である。