その言葉に、私はぎょっとする。

「だ、誰? いや、そっちこそどなたですか。人の部屋に勝手に」

「こっちが聞いているの。それにこの部屋はあなたの部屋ではないだろう」

「いや、まあでも、一応関係者っていうか」

「私だって関係者だ」

「ええっ、あっ、っていうか鍵閉めたはずです。あとチェーンもかけたのにどうして……」

「合鍵はガスメーターの中に入ってる。それから、チェーンは切った」

「切った!?」

「ほら」

「いや、ほらってニッパーを見せられても!」

 うわあ、敷金がッ! というか不審者、あまりに不審者。

 助けて、ヒメムラサキ。そう思ったけれど、すでに携帯端末の電池は切れている。ジ・エンドだ。

「で、あんた誰? なんでここにいるの。っていうか、奇跡さんの何?」

 こっちのセリフです、という言葉を飲み込んでどうにか声を出す。

「えっと、何って……妹ですけど」

 バチンッ、と小気味いい音が響いて自分が平手打ちされたのだとわかった。

 いってえ!
「な、なにするんですか……!?」

「失礼。手が勝手に」

「勝手に!?」

 完全にやばい人だ……という私の動揺を見抜いたかのように。

 悠々とした動作で美女はダイニングキッチンを抜けて、寝室に入っていく。