母は、まるで、天使に出会った敬虔な信者のような顔でまじまじとヒメムラサキの顔を見つめる。

「……奇跡、ちゃん?」

 私は、深く、深く、ため息をついた。

 予想通りの反応だった。

「奇跡ちゃん……ああ、奇跡ちゃんが戻ってきたのね」

 ヒメムラサキは――神崎奇跡の遺した仮想神格システムのT.S.U.K.U.M.O.は幼い日の神崎奇跡の容姿に瓜二つだったのだ。

 それはたぶん、まだ私と奇跡が「そっくりの姉妹」と言われていたときの姿だった。

 初めてヒメムラサキの姿を見たとき、あまりの驚きに言葉を失った。

 そして、ヒメムラサキを自分以外の誰かに……とりわけ家族や奇跡の友人には会わせたくないという気持ちになった。

 ヒメムラサキの姿を見た人の反応は、予想にたやすいものだから。

 目の前の母親のように、きっとヒメムラサキの向こうに神崎奇跡を見出すだろうから。

「ああ、奇跡ちゃん……、はるかのところにいると、大変でしょう。うちに、私たちのうちに戻っていらっしゃいよ」

 母が、聖なるものに触れるように恐る恐るヒメムラサキに手を伸ばす。