「でもさ、お姉ちゃんはそういう人だったじゃん」

「そういうってどういうこと?」

「遺書とか、スナック感覚で用意するような人だったじゃん。なんか、浮世離れしちゃってさ」

「そんな言い方!」

 声を荒げた母は、大きくため息をついた。

「いいわ。あなたは昔から冷たい子だったから」

「……片付け、するよ」

 昔から。

 よく言ったものだ。昔から、だなんて。

 私のことなんて、見ていなかったくせに。

 美しくて、聡明で、特別な、奇跡のことばかり見ていたくせに。

 生活感のない1Kの部屋。

 片隅に積まれていた段ボール箱を組み立てて、部屋にある少ない荷物をどんどん詰め込んでいく。

『あの人、奇跡にもはるちゃんにも、全っ然似てないね?』

 突然、ポケットの携帯端末から声が響く。

「ヒメムラサキ、空気読んで」

『だって、本当のことじゃん。なんだかすっごくヒステリックだよ』

「ちょっと、やめてって」

『はるちゃんも、なんとか言ってやればいいのに! なんならヒメが一発決めてきてあげようか?』

「だから、やめてってば!」

 思わず、声を荒げてしまった。