あまりにも偉大な姉を、手放しで慕い続けられるほど人間はできていなかった。

 奇跡といっしょにこの神社に通っていた日々が大切な思い出なのと同じくらい、神崎奇跡への恨みは私にとって未だにリアルで生々しいのだ。

『大嫌い、か』

 ヒメムラサキは小さく呟く。

 神崎奇跡が、大嫌い。

 それは、たぶん生まれて初めて口に出す感情だった。

 神崎奇跡は神様だ。

 だから、嫌うことなど許されない。

 それでも、遠い日々に奇跡と一緒の時間を過ごしたこの神社だったなら、そんな告白も許されるようなきがしたのだ。

 しばらくして、T.S.U.K.U.M.O.システムを動かしている旧式の携帯の電池がなくなりそうなことに気づいて、慌てて家路についた。