お小遣いではどうしても手が届かないコミックのシリーズを揃えるために手にした古本だった。

 けれど、結局それきりその古本屋に足を踏み入れることはなかった。

 少女漫画のシリーズの第八巻。

 中古で手にしたその巻だけが、いまでも「私のもの」になったという気はしない。

 何年も本棚に並んでいるそれは、いつまで経っても他人のものだ。

 どれだけ中古品を所持し続けていても。

 元の持ち主がどんな人だったのか。
 どういうしてそれを買ったのか。
 何故それを手放すことになったのか。

 ……それがわかることはない。

 その事実は、私を不安にさせる。
 わからないものは、気味が悪い。